About Christopher Nemeth

 

ファッションデザイナー、アーティストであるクリストファー・ネメスは1980年代後半のロンドンの伝説的店ハウス・オブ・ビューティー・アンド・カルチャーのメンバーとしてキャリアをスタート。1986年に活動を東京、原宿に移し、独自の形やスタイルを構築した。2010年に亡くなった後も、ネメスのブランドと東京の店は変わらず彼の世界観を受け続けている。

トレンドに左右されず妥協も許さず、長年静かにアトリエで作り上げたネメス独自の美学は、途切れることのない一つの作品である。そのコンセプトは外部から来るものでなく、制作する喜びからきている。それは本能的であり、その道の匠への追求を求めるものであった。結果として作り出される製品よりも、そこに到達するまでのプロセスを重要視し、生地や縫う動作をモチーフにした数々の絵などの作品は今も彼の店を飾る。

 

 

The History

 

クリストファー・ルイ・ネメス(Christopher Louis Nemeth、1959年4月20日-2010年9月22日)はイギリスのバーミンガムで生まれた。1979年にロンドンへ移住し、キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツ(Camberwell College of Arts)でペインティングを学ぶ。1982年卒業後アート活動を続ける中、自分が着る服を作るためパターンカッティングや裁縫を独学で学び、処分された郵便袋や自作のペインティングのキャンバスを生地として使って服を製作していた。ロンドン、ケンジントンマーケットの露店で服を売り始めたところ、写真家マーク・レボーン(Mark Lebon)に見入られ、i-D、Face、Tatlerなどの雑誌に取り上げられるようになる。この時期1985年にはハウス・オブ・ビューティー・アンド・カルチャー(The House of Beauty and Culture)のメンバーとして様々なコラボレーションをした。中でもアクセサリーデザイナー、スタイリストのジュディー・ブレーム(Judy Blame)とは数々の一点物の作品を一緒に制作した。

1986年に拠点を東京に移し、表参道にあったセレクトショップ、ゼクトアー(Sector)で服を売り始める。80年代後半から90年代の前半の間、東京のオン・エアー・イースト(On Air East)などで様々なファッションショーを行うなど、活動を広げていた。1994年にはジュディー・ブレイムとマーク・レボーンを東京に招待し、共にファッションショー、ハード・ワーク(Hard Work)を発表した。1993年ゼクトアーは移転し、クリストファー・ネメスの旗艦店としてオープン。その後、ネメスの作品は1993年から1994年にナショナル・ギャラリー・オブ・オーストラリア(National Gallery of Australia)で行った展覧会Dressed to Kill: 100 Years of Fashionや、2013年にヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)での展覧会、Club to Catwalk: London Fashion in the 1980sなどで作品が展示される。

2010年にクリストファー ・ネメスは他界。その後も、ネメスの家族が作品を維持し、表参道にある店は今も変わらず彼が作った服や靴、小物などを販売し、ネメスの世界観を守り続けている。
2015年にはルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のメンズアーティスティックディレクター、キム・ジョーンズ(Kim Jones)とルイ・ヴィトン2015年秋冬メンズコレクションにて、ネメスへのオマージュとしてコラボレーションをした。ネメスの代表的ドローイングの、布の繊維を拡大して描いたロープのモチーフを使った服やバッグなどが作られた。